日刊スポーツドラマグランプリ
受賞おめでとうございます。
ここしばらく…
春…・れいさん・・・あぁ、セカムズ・・・・
と、吸引力半端ない魅力に、すーーーーーっと吸い込まれていっておりましたので、時間見つけては、セカムズを一話から見るという、もはや呼吸するように愛おしさを吸いこんでおります。
で。
先日「羽海野チカの世界展」に行ってまいりまして。
その時の感動がちょっとすごくて。
作者のキャラへの愛といいますか。
(また語ります。)
そうするとですね。
セカムズにおいての「柴山美咲」という人の背景がとても丁寧だと、今更のように感動したので。
メモのように残しておきたいな、と。
くっそ長いこと、ぶつくさ言ってます。
私的キャラ作りのメモでもあるので、スルー推奨。
柴山美咲はおじいちゃんっこ
おじいちゃんっこというのには、若干語弊があると思うんですけど(両親を亡くして、親がわりでもあるわけですから)、それが鮫島零治に惚れる要素として描かれてますよね。
そこから遡るに、美咲にとって「おじいちゃん」は永遠に溶けない呪縛のようなものなのだなぁと。
幼いころに両親を亡くし、おじいちゃんに男手一つで育て上げられて、美咲にとったらもはや「おじいちゃん」がすべてだったと。
愛情をくれるのも、
尊敬する人も、
孝行して返したいと思うのも、
夢へ導いてくれたのも、全て。
その裏で、美咲もおじいちゃんもどこかで、来るべき日に備えてたのではないかなぁ、と。
高校を卒業するときに、美咲は「早くおじいちゃんと働きたい」と、進学ではなく就職を希望。
対しておじいちゃんは「大学に行け。そして早くいい人見つけて嫁に行け」といいます。
ここ、泣けますよ。
鮫島一家の、お父さんとお母さんのエピソードにも通じるくらいの“すれ違い”。
きっと、二人とも同じように「おじいちゃんの先は、長くないかもしれない」と悟ってるんですよね。
孫が18歳。少し若目に見積もってもおじいちゃんは、75歳くらい?
いわゆる定年は越えています。
そうなると美咲の子供の頃からの夢である「おじいちゃんと一緒にホテルで働く」を叶えるには、現実、美咲が自分でホテルを作るしかなくなるんですよね。
自分がオーナーであれば、おじいちゃんを雇えますから。
おじいちゃんもそれをわかってるんでしょう。
そのために、真面目な美咲がつっぱしることも。
けど、同じ業界で働いてきたからこそ分かる「楽な仕事ではない」という現実。
それに、早くに両親を亡くし所謂「一般的な家庭」というものを知らない美咲に、大学に行き学を得て人脈を増やし、良い人に巡りあって結婚してほしい‥という、おじいちゃんのささやかな願いは。それは自分が美咲を見届けてやれる限界、を悟ってのことだと思うのです。
託す相手を、見たいのだと。
おじいちゃんも、美咲も、お互いを思っていて。
それ故のぶつかりがあって日本を飛び出してしまった美咲。
おじいちゃんに親孝行したい。
そのために、一緒に夢を叶えたい。
そんな美咲の気持ちは、おじいちゃんもわかってる。
でも、それだけでなく、単純に美咲が仕事に夢中なことも。
本気なんだということも、きっとおじいちゃんわかってるんでしょうなぁ。
土地を残したというのは、最大の応援だったと思うんです。
病を隠していたことも、自分の願った「安定による安心」よりも、美咲が夢中な「いつか、と願う不確定な未来」の方に、美咲の幸せがあるとふんだんでしょうなぁ。
だから。後々、零さんに
「夢を応援された」ことに、美咲は満たされたのかもしれない。
おじいちゃんが、命を賭して自分の夢を守ってくれたから。
応援は、後の呪縛
美咲がまひろちゃんに、「自分の力で歩かなければ、遠くには行けない」と語るシーンがあります。
真面目で学級委員体質の美咲からしたら、ものすごく頷ける一言。
まひろちゃんも「まじめーーーーヾ(=д= ;)」と若干呆れていますが。
けど、美咲にとって「夢」というのは、こうなったらいいな♪うふふ♪ってものではなく、「背負ってるもの」なんですよ。
天涯孤独の身。
しかも25歳の若さで広大な土地もある。
おじいちゃんの「応援」が、美咲には重たく乗っかってきているのだと。
唯一の肉親との、「いつか自分のホテルを建てておじいちゃんと働く」という夢は、約束を通り越して、おじいちゃん亡き後は呪縛なんですよね。
簡単に逃げられない。
放送時、ヒロインらしくない…女性っぽさがない…キツイ、などなど割と言われた「柴山美咲」という人は、本当は重荷に押しつぶされそうなのに、必死で踏ん張ってる、ギリギリの淵で戦ってる女性…なんですよ。
そんな人なものだから「夢と恋愛は別物だから。」と。
自分の生き方に、恋愛は影響しない!と言えるんですよね。
その理由として、
「夢を原動力に生きてきたから、そんな簡単には扱えないんだよね。」
この一言。
夢=おじいちゃん
もちろん自分も夢中になってはいるけど、その根本から逃れられない。
恋愛は美咲にとったら未来を描くものではなく、今壊れそうな自分を、ほんの一瞬癒してくれるもの。
それでしかなかったのかも知れないですねえ。
刹那の癒しの結果
パリから帰国したのは、おじいちゃんの死がきっかけ。
おそらく、もろもろの手続きが終わったらパリに戻るつもりだったのではないでしょうか。
けど、おじいちゃんの残した土地のことを知り、その想いを受けて日本に残ることを“急に”決めたんだと思います。
元彼ミルコが、執拗にロミオメールを送ってきたのは、そう言う経緯があったのでは…と。
キチンと帰国を決め、別れを済ませていたら寂しがったり貶してきたりするメールを何度も送ってくるかなぁ・・・・??と。
石神さんの結婚が報告される回で、社長のお役に立てればと恋愛小説を読み漁る石神さんに、美咲が本をお勧めするシーンがあります。
そこで「神様のボート」を差しだす。
(後の、神奈川県から出ていけ!の際に例に出した本です)
神様のボートは、江國香織の中でもまっすぐに「不倫の果て」のお話です。
一箇所に留まることを良しとせず、あるはずのない想い出を語る母と、それを聞く娘。
もしかしたら、と邪推しますが。
ミルコとは不倫関係(もしくは彼女がいる)のでは。
土地を背負わざるを得なくなったことで、美咲はミルコとの関係も一方的に切ったのかもしれない。
おそらく。
パリでの日々は、ものすごくバランスが取れていたのだろうと。
夢だった仕事に就いて、仕事の邪魔にならない程度の恋人もできて。
満足していたのだと思う。
だから、和田が再三誘っても、「日本のホテルで働く」ということに魅力がなかったんだろうなぁ。
夢を追い、多少希薄かも知れなくても恋愛に癒され。
その“ちょうどいい”を捨てるほどではなかったのかも。
(ミルコを都合よく扱ったのは、美咲も同じだったのかもしらんな‥。)
日本に帰り、冷静になった頭でパリでの日々を思うとき美咲は多分、少し罪悪感を持つのだろうな。
おじいちゃんを看取れなかったこと。
自分の「楽しい」に夢中になっていたこと。
(もしかしたらまっとうではない)恋愛に浸っていたこと。もしくは利用したこと。
真面目な彼女のことですし、そんな自分を「情けない」と卑下していたのかもしれません。
それ故、頑なに「約束を叶えるまで、ちゃんとしなくては。」と自分の気持ちに自由に生きるということを、抑え言い聞かせてきたのかも。
そうやって「ヒロインらしくない…女性っぽさがない…キツイ」という頑なな姿で、鮫島ホテルに現れたのやも知れません。
(で、入社を機にメガネも外し髪も切り、美咲は全部をやりなおすつもりだったのだと)
こんなはずじゃなかった。
零さんの告白が実り、美咲と付き合い始めて。
おじいちゃんに似た零さんとの時間は、自分がパリに行ってる間に失ってしまった時間を取り戻してる感覚もあったんではなかろうか。
もちろん零さんへの想いは恋心ではあったと思うのだけれど、情熱的に恋するというよりも、「安心感」を求めていたのかもしれない。
25歳のうら若き女子が、一人きりで背負い戦い抜く日々の中。
風呂がなかろうが気に行った家を選び、
お気に入りで周りを固め、
以前住んでいた場所の近くにもう一度住む。
(パリ以前も同じ銭湯に通っていたと思われるので)
おじいちゃんきっかけで、好きになった落語のCDを聞き、
定食屋はおそらく子どものころからの行きつけ。
美咲のプライベートにはとにもかくにも、“以前と同じ”ことで求める“癒し”で溢れてる。
(ただ借りたアパートがパリのアパルトマン風なのが、またこれ。)
そこに零さんが加わる。
安心感が、じわじわと恋愛にシフトしていく過程で、零さんに浮かれてく美咲がすごくよくわかるのが落語デートの日。
自分の「安心するもの」を受け入れられた時の笑顔ってのは、この人は大丈夫…と、かすかに立ててた妖怪アンテナを下げた日だったのかもしれない。(最後に喧嘩するけど。)
安心よりも恋愛にシフトした気持ちが、後に自分からキスをという行動になるのだろうし、何度も家に泊まることを受け入れたのだろうし、夜中三時まで「いさなみ夫婦」の会話になったのだろうと。(今思えば、1番恋に恋した美咲が見れる時期。)
そんな一旦戒めて言い聞かせたはずの「浮かれ」にまた乗っかってしまった自分を、責めに責めて再び頑なスイッチを押してしまったのが、ベット事件だったんじゃないのかなぁ。
浮かれを正当化するには、相手から「大切だ」と受け入れられること。この恋愛が、本物だと感じること。
なのに、零さんったらひよっちゃったから(いや、大好き過ぎて寝顔に満たされるからこそなんですけど)受け入れられない自分→一方的な浮かれ?→ミルコ同様、都合のいい恋愛(もしくはミルコを都合よく扱ったように、扱われた感)→自己嫌悪。
お互いが全力でドッチボールしてるようなもんですからね。
受け入れろや!!!!って。
未熟な美咲は、それを全部零さんのせいにして「こんな人だと思わなかった」「勘違いした自分が恥ずかしい!」と飛び出すけれど。
零さんのせいにする。
それが、どれだけ零さんに甘え切った行動なのかということに、25歳の女の子。まだ、気が付いてないんですよね。
(恋愛経験値の低い零さんも同様ですけど)
嫌いだった部分も、いつか好きになる
美咲の“頑なさ”と“押し込め言い聞かせてる”という姿を見抜いたのは和田さんのみ。
社内恋愛のエキスパートですからね…それもなせる業なのかもしれませんが。
考えてみれば、パリでの美咲の様子を知ってる唯一の人なんですよ。
村沖ですら届かなかった、その部分に当初から突っ込んでいたのは、パリでの美咲と今の美咲の違いに気が付いたからなのだろうと。
もちろん、美咲がミルコのことを和田さんに話してるとは思えないので、和田さんの目には「パリで活き活きと幸せそうにフロントの仕事をしていたのに、鮫島ホテルの社長室に入ってからは、トーンダウンしている」と、映った可能性大。
なので、自分のホテルに来た際には「コンシェルジュだ」と即決したのでしょうな。
美咲が言ったセリフで「人とホテルは違うから。きらいだった部分もいつかは好きになったりもするからね」があります。
このセリフは、全てを救う。
和田さんが見抜いた美咲の変化は、誰よりも美咲自身が苦しかった所のかもしれない。
自分の嫌いな部分の処理を、零さんに受け入れられることで癒されようとしてた美咲は(懐の整ってなかった)零さんに受け止められなかったことで、落ちながらもまたリセットしたんだろう。
美咲の性格として、良くも悪くも。
一旦仕切り直すとなったら、人だろうが環境だろうが躊躇なく切る所が、二度目ましてで出て来ます。
で零さんも。
好きな人を受け止められなかったことで、(無茶苦茶に走り抜けながら)、核心にある想いに気がついて行ったんだと思う。
単純な、美咲が好き。ってのと、
もしかしたら気がついていたのかもしれない。
土地の話を聞いて。
経営者ですからね。ホテルを建てるほどのものを?って。それをあいつは、一人で?と。
あんな必死に「それも飲もうじゃないか!!」が、その先だったから悔やまれる笑
好きな人と、仕事とは同じではないからね。
自分と相手の嫌いだった部分も、いつかは受け入れ合えたりもするよ。
そうなっていったきっかけが、呪縛だった夢だったなんて。
皮肉めいたようで、素晴らしい大団円。
抱えきれないくらいになっていた、「将来の夢」であり「約束」だったものを、代わりに叶えてやろうなんて人なら、美咲はなびかなかったろうな。
だって、これ以上自分のことを卑下したくないもん。
重荷を軽くする、という手助けの方法として、代わりにやってあげる、というのは新たな重荷を生むと、零さんはわかっていたのかもしれないな。
(イコールで、なかったことにする‥という、後引くパターン。)
あなたが抱えてるのなら、あなたが消化しなさい。
と背中押す。
一緒に暮らすというのも、家賃分浮くでしょ?ってのも、それって結局金銭的援助じゃぁん!ってのを黙らせた零さんの「君といると俺は変になる」は、零さんも美咲と同じく嫌いだった自分を受け入れる過程なんだ、だからこそ一緒にいたいと。あれよ、ウィンウィンよ。
夢を叶えるための、環境を与える。
零さんが美咲にしてあげたことは、もしかしたら呪いになりかけたおじいちゃんとの約束を「夢」から「目標」に数段階レベルアップさせてくれたのかもしれない。
…と、多分美咲は気が付いてない。
それに気がつくのは、その目標が達成できた時。
だから、今は。
相変わらずの我の強さで、零さんを尻に敷きながら卵料理作ってくんだと思う。
(で、零さんはいそいそと、期限を確認しながら牛乳買うし、皿も洗うのだと思う。)
以上。(笑)