自転車を買い換えた。
ムスメの自転車は、幼稚園年長くらいで買った、20インチのものだ。
青と白のボディで、キラキラした飾りがタイヤについている。
ハンドルにだってジュエルがついていて、それはそれはお気に入りだ。
だか、時はながれて小柄なムスメはここ最近、ぐいっと身長が伸びて145センチほどになった。
20インチの自転車は、ふと気がつくとかなり小さくなった。
乗れなくはないが、体に対して車体が小さいので肩が内に入る。パッと見たら、お猿さんが三輪車に乗ってるような感じだ。
そろそろ新しくせねばなぁ‥と言っていたところ運良くお気に入りを見つけた。
ムスメの好みドンピシャなそれは、口下手でシャイなムスメを、店員さんの前でニヤニヤグフグフさせるくらいの好みど真ん中だった。
よかったよかった。
サイズも大丈夫そう。
しばらくこれでいける。
自転車屋さんで、購入手続きをし始めたときムスメが言った。
「今日、二台持って帰るの?」
「いや、置けないからここで引き取ってもらうよ。」
すると、ムスメの顔が少し曇った。今の今までニヤニヤしていたのに。
あ、と思った。
なので、手続き待ちの間ムスメと乗ってきた自転車のところへ行った。
古くなって、いくら洗っても落ちない汚ればかり。タイヤのキラキラはいくつも割れて無くなっていたし、ハンドルのジュエルもくすみまくってる。
「写真、撮っとこうか?」
と言うと、無言でうなづいた。
「一緒に撮る?」と言うと首を振ったけど、まぁまぁ、と言って顔を隠すムスメと自転車の写真を撮った。
お世話になりました。
事故もなく、大きな怪我もなく過ごしてくれてありがとね。
と、自転車をなでなでして店内にもどりました。
するとムスメ、ひとりトトトっと出て行き、自転車の鍵からキーホルダーを外し、古い自転車にカシャンと鍵をはめた。
なでなでとしてたらしく、そのあと戻ってきた時は少し涙ぐんでおりました。
かあちゃん、なんだか胸が痛い。
「持って帰ってもいいんだよ?」
「いい。」
「いいの?」
「うん。」
と。
新しい自転車の鍵に、さっき外したキーホルダーをつけて、「よろしくお願いします」となでなでしたムスメは、
でかい!早い!幅!と叫びながらも、嬉しそうに乗って帰った。
大きくなったなぁ‥と、ムスメが誇らしくなった。
いや、自転車なんだけど。
相棒のように居たから、そうやって惜しむ気持ちがある事も、それを伝えることも。
それから、区切りを自分なりにつけたことも。
(やだー寂しいから、両方置いておきたいーとか言わなかった)
知らぬ間に、ムスメは伸びた身長分心も育ってたんだな。
かあちゃん、置いてかれそうだわ。
私の方が、いやいや‥気がすむまで置いときたい!とか言い出しそうだったわ。
これから少々、大きくなった愛車に手こずるかもしれないけれど。
わいわいキャイキャイ過ごす時間の、新たな相棒となってくれれば言うことはない。
安全にな。